アルト・ハイデルベルク(164)
𝕬𝖑𝖙 𝕳𝖊𝖎𝖉𝖊𝖑𝖇𝖊𝖗𝖌
———————————【164】———————————————
Karl Heinrich:(leise). In das Krankenzimmer. Neben
.............................jemand, der zeitlebens ein verbitterter Son-
.............................derling war und mich zu Tode foltern wird.
............................(Pause;geht zu ihm, sich selbst überwin-
............................dend, leise, bittend.) Exzellenz, Sie müssen
............................einen Ausweg finden. Lassen Sie mich hier,
............................Exzellenz.
.........Minister: Eure Durchlaucht !
Karl Heinrich: Lassen Sie mir Zeit, Exzellenz, nur ein Jahr
............................oder nur einige Monate noch. Ich werde dann
............................zurückkommen, ich verspreche es Ihnen. Exzel-
............................lenz ? Ich... ich, es wird sich ein Ausweg find-
............................en, nich war ? Irgendwie, es muss einen Aus-
............................weg [geben]?
.........Minister: Ich kenne keinen.
———————————— (訳) ————————————————
...カール・ハインリヒ: (小声で) あの病室へ戻るのだな.生涯
.............................世をすねた奇人然としたあの人のそばに.
.............................私を死の拷問にかけてしまうようなあの人
.............................のところに.(間;自分の心を抑え、懇願
.............................するように大臣のいる方へ歩む)閣下、是
.............................非、解決方法を探して下さい.私をここに
.............................置いてください、閣下.
...............大臣: 殿下!
...カール・ハインリヒ: 閣下、私に時間を下さい.たった1年だけ、
..............................いや、あとたった2、3か月でもいいのです.
.............................それで私は帰りましょう.きっと約束します、
.............................閣下. 私は...私は,、何か打開策がある
.............................でしょう、ありますよね? 何かうまい打
.............................開策があるはずでしょう?
...............大臣: 私には分かりかねます.
————————————《語彙》————————————————
zeitlebens:(副) 一生(の間)、生涯
verbittert:(過去分詞、形) ひねくれた性格の、世をすねた
der Sonderling:(E型) 変人、奇人
本文では改行のためSon-derling と分節して
改行したが分節は子音が続く場合、最後の
子音を次の音節に回して切る.Son-der-ling
ただし1文字とみなす子音に注意:ch, ph, th
sch, ß, st は1個の子音とみなす.ck の場合
kk と変えて、k-k に分節する.
3,4 格支配のinは3格支配で「場所」、4格では「方向」.
In das Krankenzimmer:あの病室へ(戻るのか!)[方向~へ]
cf: In dem Krankenzimmer:あの病室では (待っている!)
[場所~で]
ここでは4格で、[方向]を表しているので、
in das Krankenzimmer のあとにzurückkommen
を補ってみるとよいでしょう.zurückgehenも
可能.どちらが正しいか、発する言葉が病床の
伯父に対するのもならzurückkommen.もしも
試験問題で書かされるとしたら、zurückfahren
で逃げる手があります.
foltern:(他) 拷問する
zu Tode:(副句) 死ぬほど、ひどく
foltern werden:死ぬほどひどい拷問にかけるだろう
sich überwindend:(現在分詞) 自分(の気持ち)を抑えながら
bittend:(現在分詞) 懇願するように
leise:(副詞) 小声で、(音の) ちいさい、かすかな
der Ausweg:(e型) 逃げ道、打開策.
irgendwie:(副) ❶なんらかの方法で、②なんとなく
es gibt + 不定冠詞A格 + 名詞 :~がある
es geben müssen + 不定冠詞A格 + 名詞:
~があるはずである
irgendwie es geben müssen einen Ausweg:
何とかすれば打開策があるはずだ.
—————————————≪感想≫————————————————
カール・ハインリヒの大臣との悲壮なやりとりが続いて
います.電報ではなく、大臣自ら夜行列車で迎えに来た
ということは、帰国は最早、避けられない運命であるこ
とは王子にもわかっていたはずです.折衝が切なく、気
の毒に感じる名場面です.
と同時に、この当時のドイツがいかにのどかな時代だっ
たかが見て取れる一場面でもあります.これが中国だった
ら、これ幸いとばかりに、大臣か誰か他の有力者が王座を
奪いとることでしょう.